朝のひかりは、いちばん安いごちそう

早起きは、ずっと苦手でした。

目ざましを三つかけて、三つとも止めて、そのあと二十分おきに起きる。
そういう朝をながく続けていたのですが、去年の冬、たまたま六時に目がさめた日がありました。

部屋の色がちがった

カーテンをあけたら、部屋の色がいつもとちがっていました。

昼のひかりは白くて、まっすぐで、ものの形をはっきりさせます。
でも朝のひかりは、うすい蜂蜜のような色をしていて、床のうえをゆっくり這っていく。
壁のでこぼこも、机の傷も、ぜんぶやわらかく見えました。

いつも見ている部屋のはずなのに、はじめて来た部屋みたいでした。

なにも買っていないのに、部屋が模様がえされていた。

それから

それ以来、ときどき早く起きるようになりました。
毎日ではありません。週に一度か二度。
「今日は起きられたな」くらいの気持ちで、カーテンをあけます。

やることは、とくにありません。
お湯をわかして、湯気が窓のひかりに透けるのをながめて、それでおしまい。
十分もしないうちに、いつもの白いひかりに変わってしまいます。

気づいたこと

うれしいことの多くは、お金を出して買うものだと思っていました。

でも、朝のひかりは、ただカーテンをあけるだけで手に入ります。
しかも毎日、あたらしいものが届く。
受けとらなかった分は、そのまま消えるだけで、たまっていきません。

いちばん安くて、いちばん足の速いごちそうだな、と思っています。

きょうも、あけそこねました。
でも、あしたがあります。