雨の日の台所
雨がふると、台所に長くいます。
出かける予定がなくなると、時間だけがふいに手もとに残る。
その残った時間を、なるべくゆっくり使いたくて、いちばん手間のかかることをします。
たとえば、玉ねぎ
飴色になるまで炒める、というやつです。
レシピには「二十分」と書いてあることが多いのですが、
本当にきれいな飴色にしたいなら、四十分はかかります。
弱火で、木べらでときどきかきまぜて、あとはただ立っている。
はじめの十分は、まだ玉ねぎの顔をしています。
二十分をすぎたあたりから、かさが半分になって、ふちが色づいてくる。
三十分で、台所ぜんぶがあまいにおいになります。
待つのがしごと
この四十分のあいだ、わたしがしていることは、ほとんどありません。
かきまぜる。火をすこし弱める。また、かきまぜる。
けれど、はなれることもできない。
目をはなすと焦げるので、そこに立っていなければならない。
なにもしていないのに、ちゃんと役に立っている時間。
こういう時間は、なかなかありません。
窓の外では雨がふっていて、雨の音と、じゅう、という音だけがしています。
できあがったもの
飴色になった玉ねぎは、じつはそんなに量がありません。
大きいのを三つ使って、小皿に半分くらい。
スープに入れたり、パンにのせたり、そのまま食べたりします。
とてもおいしいのですが、四十分ぶんおいしいかというと、どうでしょう。
たぶん、おいしさのために作っているのではないのだと思います。
雨の日に、台所に立っていられる理由がほしいだけで。
つぎの雨の日に
だしをとる、というのも、いい手だと聞きました。
こんぶを水につけて、ひと晩おくそうです。
ひと晩というのは、ずいぶんぜいたくな待ち方だと思いました。
つぎの雨が待ちどおしくなっています。